東洋医学的養生のすすめ│現役鍼灸師が伝えたい心と体の整え方

「 最近なんとなく調子が悪い」「数値の異常はないのに不調を感じる」「季節の変わり目は体調を崩しやすい」といった声を私の鍼灸院でもよく耳にします。

そんなとき、支えになってくれるのが東洋医学の「養生」という考え方です。移りゆく季節の中には、そのときどきの心と体の整え方があります。自分の心と体に合わせた養生の知恵を、あなたの生活にも取り入れてみませんか?

この記事を最後まで読めば、あなたの不調に対するヒントが得られるかもしれません。東洋医学の世界に飛び込んで10年以上の現役鍼灸師がわかりやすく解説していきます。 

東洋医学的養生の基本

心や体のちょっとした不調を感じることはありませんか?その不調を放置していると、長い年月をかけて大きな病気につながっていくこともあります。「養生をする」とは、自分と向き合うということです。

具体的な養生法を知る前に、まずは養生の言葉の意味や歴史を簡単に知っておきましょう。

養生の意味

養生は「生を養う」と書きますが 、これは「命を大切に生きる」という意味です。心と体のバランスを整え、病気を予防し、健やかな暮らしや生活を守るための知恵が養生なのです。

鍼灸施術や漢方処方などを東洋医学の治療法とするならば、養生は自分でできる健康法と言えます。近年ではセルフケアと呼ばれることも増えました。

養生の歴史

養生の原点は古代中国までさかのぼります。いつ頃から養生という言葉が使われ始めたのか定かではありませんが、 初めて体系的に語られたのは紀元前3世紀ごろに成立した『黄帝内経』という中国最古の医学書です。

養生思想が日本へやってきたのは6世紀ごろ、仏教や東洋医学とともに伝来しました。もっとも流行したのは、民衆が健康に関心を持ち始めた江戸時代でした。日本養生思想の祖と呼ばれる貝原益軒の『養生訓』という書物も江戸時代に書かれたものです。

明治以降、日本国内でも西洋医学が中心になりますが、現代では病気を未然に防ぐという東洋医学的な養生思想は代替療法やセルフケアとして再注目されています。

養生の基になる思想

①天人合一(てんじんごういつ)

「自然の中に人はあり、人の中にもまた自然がある」というのが天人合一思想です。自然と調和して生きることで初めて、本当の健康や安らぎが得られるということを[13] 説いています。

②陰陽五行

自然界のすべての現象は「陰」と「陽」のバランスと、「木・火・土・金・水」の五つの要素の相互関係で成り立っているという考えです。天人合一思想によりこの自然界の現象が人体にも適用されるというのが、東洋医学の基本原理です になります。

③中庸

どちらにも偏らないという概念を表す言葉です。静的な真ん中ではなく動的な良いバランスという意味合いを持ちます。「完璧な50:50」という全く偏りのない静的な一点を表すのではなく、波の上の船のように、揺れながらも平衡を保つ動的なバランスという意味合いを持ちます。東洋医学では、体内の物質が中庸を保つことが健康とされています。 

④未病

「いまだ病にあらず」という意味の言葉です。ハッキリ病気と診断されるわけではないが、不調を抱えている状態を指します。例えば冷えや慢性疲労、軽い生理不順、や不眠などさまざまです。

⑤気血津液

気・血(けつ)・津液(しんえき)という3つの物質が体内を循環し生命活動を維持しているという東洋医学の基本思想です。

⑥虚実

虚(きょ)は不足、実(じつ )は盛んであることを表しています。

種類別の東洋医学的養生法

次は具体的な養生法を紹介していきます。

食養生

食養生とは心と体の不調を改善し、健康を維持するために食事を工夫することです。何をどのように食べればよいのか、先人たちから引き継いできた知恵の結晶とも言えます。

味やカロリー、バランスどれも大切な要素ですが、食養生を学べば+αで「自分に合った食材選び」を知ることができます。自分がどのタイプに当てはまるか考えながら、さっそく今日の献立の参考にしてみましょう。

①気虚体質

状態:気の不足

特徴: 疲れやすい・食後に眠くなる・風邪をひきやすい・朝起きれない・下痢軟便

 おすすめ食材:

● 補気のもの:山芋、かぼちゃ、じゃがいも、はちみつ、鶏肉

● 穀類:白米、もち米、オートミール

● 根菜類:にんじん、れんこん、さつまいも

ワンポイント:脾胃(消化器)を養うことが大切

②冷え体質(陽虚タイプ)

状態:気の不足が慢性化した状態

特徴: 手足が冷える・疲れやすい・寒がり・むくみやすい

おすすめ食材:

● 温性のもの:しょうが、にんにく、ねぎ、シナモン

● 陽を補うもの:羊肉、えび、くるみ、にら

● 根菜類:ごぼう、にんじん、かぼちゃ

ワンポイント:加熱調理や温かいスープにすると満点

③熱乾燥体質(陰虚タイプ)

状態:陰分の不足、熱の根底に陰分の不足による乾きがある

特徴:やせ型傾向、乾燥肌、のぼせ、口渇

おすすめ食材:

● 寒性のもの:きゅうり、トマト、ナス、セロリ、苦瓜

● 涼性のもの:白きくらげ、れんこん、キャベツ

● 平性のもの:黒豆、豆腐、なつめ

ワンポイント:冷やしすぎないように注意、常温でも大丈夫

④熱体質(陽実タイプ)

状態:陽の気の過剰

特徴:がっしりの型傾向・、のぼせやすい・イライラ・便秘傾向・吹きでもの

  おすすめ食材:

● 寒性のもの:きゅうり、トマト、ナス、セロリ、苦瓜

● 清熱作用のあるもの:緑豆、豆腐、はとむぎ、緑茶、スイカ

● 苦味のあるもの:セロリ、春菊、ふき

ワンポイント:冷やしすぎないように注意、常温でも大丈夫

⑤血虚体質

状態:血の不足

特徴: 顔色が青白い・貧血ぎみ・めまい・眠りが浅い

  おすすめ食材:

● 補血のもの:黒ごま、ほうれん草、レバー、なつめ、クコの実

● 良質なたんぱく質:卵、牛肉、黒豆

● 海藻類:ひじき、わかめ

ワンポイント:血を増やす、巡らせる食材がおすすめ

⑥瘀血(おけつ)体質

状態:血がうまく巡っていない状態

特徴: 血行不良・肩こり・頭痛・あざができやすい

  おすすめ食材:

● 活血のもの:玉ねぎ、しょうが、にんにく、黒酢、納豆

● 香味野菜:しそ、みょうが、にら

● 青魚:サバ、イワシ、さんま

ワンポイント:血を巡らせる、温めることが大切、脂っこいものは避けたい

※すべての体質がキレイに当てはまるわけではありません。正確な自分の体質を知りたいときは、お近くの鍼灸院や漢方薬局に相談してみると良いでしょう。

起居養生

日常生活の中で、生活習慣やリズムが健康に与える影響について考えたことはありますか?

起居養生とは「日常生活における過ごし方」に関する養生のことを指します。特に「起床」「就寝」「食事」「休息」「運動」など、日々の生活リズムを自然と調和させることで、体調を整え、病気を予防することを目的とした養生法です。

①睡眠時間と質

● 起床:春夏は早起き、秋冬は少しゆっくり起きるのが理想

● 就寝:就寝は共通して早く寝るのが理想(22時〜23時までを目安に)

● 就寝前は温かい飲み物や足湯がおすすめ

● 寝る前の運動や強い感情刺激(夜の考え事など)は避ける

● 日中は太陽の光を適度に浴びる

②食事

● 食べる時間はなるべく規則正しいものに

● 一日の食事回数に明言はないが、年齢・性別で柔軟に対応を

● 腹八分目を意識して食べる

● 季節や体質に合った食材を選ぶ(冬は温性、夏は涼性のものを)

③運動と活動

● 朝に軽い散歩やストレッチをする

● 年齢によって動静のバランスを考える

● 空腹や満腹での運動は避ける

● 過度な運動や労働は避ける

④休憩・昼寝

● 軽い昼寝をする(15~30分が理想)

● 昼寝は14時までに(夜の就寝に影響する)

感情養生

感情養生とは「心の健康を保つことで体の健康を守る」という考え方です。東洋医学には古来より感情のコントロールを重視し、うまく流していくことで自分の健康を守るという教えが引き継がれています。

東洋医学では、「七情(しちじょう)」と呼ばれる7つの基本的な感情が、健康に深く関わっているとされています。この感情が過剰になると、臓腑の働きを乱し病気の原因になると考えられているのです。

①怒りの感情

肝を乱す:気が上がりやすくなり、のぼせや頭痛、血圧上昇を引き起こす

②喜びの感情

心を乱す:喜びも過度であると、動悸や不眠を引き起こす

③思いの感情

脾を乱す:思い煩いは、食欲不振や疲労を引き起こす

④悲しみ、憂いの感情

肺を乱す:悲しみや憂いの感情は呼吸器のトラブルを引き起こす

⑤恐れの感情

腎を乱す:気が下がりやすくなり、足腰や膀胱のトラブルを引き起こす

⑥驚きの感情

心・腎を乱す:強い驚きの感情は、動悸や不眠を引き起こす

季節別の東洋医学的養生法

東洋医学では「人は自然の一部」と考えるので、季節ごとに変化する自然環境に合わせて、生活・食事・心の持ち方を調整することがとても大切です。これを「季節の養生(しきのようじょう)」と呼びます。

春(2月下旬~5月)

対応する五行:『木』

のびのびと芽吹く季節、主に「肝」の働きが活発になります。

養生のポイント

● 早寝早起き、朝日を浴びる

● 軽い運動で気の巡りを良くする

● 厚着をし過ぎない、体を温めることが大切

食養生

● 香りのよい食材:春菊、セロリ、ミント、三つ葉、しそなど

● 肝を助ける食材:菜の花、たけのこ、せり、ふき、クコの実など

● 酸味のあるもの:梅干し、レモン、酢など

夏(6月~8月)

対応する五行は『火』

 成長・発散・陽盛の季節、「心」が最も影響を受ける時期

養生ポイント

● 朝は早く起き、昼寝を取り入れて暑さ対策を

● 水分補給を意識し、冷やしすぎには注意

● 強い陽射しから体力を守る

食養生

● 苦味のある食材:ゴーヤ、レタス、セロリなど

● 体を冷ます食べ物:スイカ、メロン、キュウリ、トマトなど

● 冷たいものを摂るときは温性のものも:しょうが、ねぎ、にんにくなど

● 水分を補う食材:ナス、豆腐、冬瓜など

秋(9月~11月)

対応する五行は『金』

収斂(しゅうれん)・乾燥の季節、「肺」が弱りやすく潤いの養生が重要

養生ポイント

● 肌寒くなってくるので薄着に注意

● 夜更かしを避けて、早めの就寝

● 深呼吸で肺の気を養う

食養生

● 潤いを補う食材:梨、柿、れんこん、白きくらげ、はちみつ、豆乳など

● 酸味のある食材:酢の物、梅干し、レモン、キムチ、トマトなど

● 白い食べ物:大根、百合根、れんこん、山芋、白ごまなど

冬(12月~2月中旬)

対応する五行は『水』

蔵(ぞう)・温める・静かに蓄える季節、「腎」を補いエネルギーを蓄えよう

養生ポイント

● 早寝遅起きで休養をしっかり取る

● 下半身を冷やさない

● 過労を避けて静養を意識

食養生

● 温性の食材:黒ごま、山芋、くるみ、エビ、羊肉、ニンニクなど

● 根菜類:ごぼう、にんじん、大根、長芋など

  • 黒い食べ物:黒豆、きくらげ、ひじき、こんぶなど

今回は養生の基本に始まり、種類別・季節別で養生法を紹介させていただきました。あなたの生活にも取り入れられそうなものは見つかりましたか?

ちょっとした不調を放置せずに、未病の段階で体調を整えることはとても大切です。健康的な日々のために、できることから少しずつ始めてみましょう。